大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1561号 判決

(1)被控訴人は本件店舗を賃借して酒場を経営していたのであるが、昭和二十九年四月頃寿司屋に転業し、訴外天野勝男を板前として雇い入れ月給二万円を給し、東京都北区上十条の同人自宅から本件店舗に通勤させていたのであるが、三ケ月位の間に欠損続きで経営が困難となつたところから、同年七月頃従来の単独経営を止め、右天野との雇傭契約を解消して被控訴人において本件階下全部及び営業用什器設備一切を提供し、家賃税金を負担する代りに、右天野は被控訴人に月額六万円を支払つて寿司屋営業一切を自己の利益及び損失負担において経営することとし、その頃自己の家族及びその雇人と共に本件店舗に移居するに至り、被控訴人は本件建物から立退いて外神田で経営している撞球場の家の方に移り、ただ二階は昼間は「鈴や」という商号で不動産仲介業の店舗として使用している外夜間は右天野の家族や雇人の寝泊りに使わせていたのであるが、右占有の移転関係については被控訴人は少しも知らずに、当時執行中の本件建物の仮処分の点検によつて始めて知つたこと、(2)尤も右天野は昭和三十一年十二月から台東区御徒町でも別に寿司屋を開業したが、本件店舗には依然使用人を住まわせて月々六万円を被控訴人に支払つて従前の営業を継続している事実を、認めることができる。前示引用の各証人並びに本人の供述中、右認定に反する部分は採用し難く、なお右引用の証拠によれば本件店舗の寿司屋営業による昭和三十年度の所得税は前示天野勝男の納入者名義で納付せられており、右は被控訴人主張のように被控訴人が、同年度の所得税の軽減を図る目的で単に同訴外人名義を籍りて納附したものであることはこれを窺知し得ないでもないが、このこと自体は少しも前示認定と抵触するものではない。

以上認定の事実に徴して考うるに、被控訴人と訴外天野との間の前示本件店舗階下の使用関係は、被控訴人が全然右営業から離脱したものでない点からみれば、これを純然たる転貸と目することができないとしても少くとも、右天野は共同経営者の一人として被控訴人と対当の立場において右建物の一階を飲食店経営のため占有使用していることは明らかであり、被控訴人の使用人またはその占有補助機関として占有使用しているものでないことはもとより、その他被控訴人に対する何等かの従属的の関係において占有使用しているものでないこと多言を要しない。そして右の如き占有使用関係の設定は民法第六百十二条第二項所定の「賃借人ガ……第三者ヲシテ賃借物ノ使用又ハ収益ヲ為サシメタトキ」に該当するものと解すべきであつて、かかる使用関係の設定につき賃貸人の承諾のない本件にあつては、同法条による解除原因となること勿論である。

(斎藤 坂本 小沢)

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